その後、二度と、蛇は殺めなかったけれども、ネズミは殺した。
ある日、お袋が台所で「アレま、ニンジンがこんなに食べられちゃったよ、、」と、
一人ゴトを言いながら、ネズミに齧られた部分だけを、包丁で丁寧に切り取っていた。
私は、覗き込んで「ネズミの奴って、とんでもない野郎だ、、、」と思った。
お袋はそんな表情の私の顔をみて
「でも、信州の実家(農家)では昔から、ネズミが米を食べないように、別な場所に、ネズミ用の米を置いておくんだや」と微笑んでいた。
「ネズミに年貢米払うの?、、、、。そしたら、米倉の米は食べおらんのか?」と私。
「ネズミはかしこいから、自分達の領分を知っていて、食べなかったヨ」とお袋。
でもネズミはその後も、二階の神棚の献米や、ジャガイモなどをツマミ食べておった。
(今から考えると、ネズミは食欲旺盛な筈なのに、人に目立たないように、わずかだけしか食べてなかったのだが、、)
中二の時の、ある極寒の冬の朝、お袋が、起きたあと、着替えながら
「ハレま、夜中に面白いことがあったよ、フト夜中に気が付くと、ネズミが上を向いて寝ている私のオデコの上に乗っかっていたよ」
「こんなことは、生まれて初めてのことだいねえ、、。」「私のオデコは広いから乗り易かったのかね」とか
「さすがにネズミも寒かったのかもねエ」
などと言っていた。
でも私は、それ以来、母の額を見るたびに、そこへ乗かっていたネズミに対して、「あの無礼者ネズミが!と、思うようになっていった。
また、近所のおばちゃん達も「ネズミには適わないよ」と言っていたこともあるし、
コレは人類の敵や、生かしてはおけん、やっつけなければならん」
という心がどんどんと膨れあがっていった。
ヘビ殺し少年 その(4)「心の裡に潜んでいた残虐性」へ続く。