群馬県の赤城山を望む村里へ行った。
実家の近くに段々畑の水田があった。
田植えは田植え機で行うものの、田の形が長方形とは限ってはいないので、

機械では出来ない箇所もある。
その箇所へ「手植え」をするわけだ。
田植え風景は幾らでも見て来たが、友達の兄弟達と交じりつつ、
自分が田植えを行うのは初体験だった。
右手で苗を「チョボリン、スイズイ」とヘタクソな手付きで植えながら、
小学6年の時、田んぼで働くお百姓のおじさん(当時はお爺さんに見えた)が休憩でキセルを一服させながら、言った言葉を思い出していた。
「ボン、人間は食べ物がないと生きては行かれへんのや。
土から食べ物を生み出す農業はなぁ、大切な仕事や。
ワシの息子たちは大学へ行って、米作りを嫌っとるけど、百姓ほど立派な仕事はないもんや」
友達の実家の水田で、腰を屈めて苗を植えながら改めて、その通りだと納得していた。

昨夕から、私が下手に植えたあの苗達が、上手く根付いてくれることばかりを願っている。
シッカリと根付くまでの4・5日間、どうか強い風や強い雨が来ないでくれ、と切願している。